もみ ぬか やま
籾 糠 山
(1744m)
年月日 令和3年6月20日(日)
天 候 曇り時々晴れ
所在地 岐阜県飛騨市河合町天生
参加者 22名
記録者 S・T
定例山行 6:30 14人を乗せた小型バスは新富観光バスセンターを出発した。 高岡組8名はマイカー2台で向かったという。 8:10 金沢出身の泉鏡花の『高野聖』の舞台となった天生峠(1290m)の広い駐車場に着いた。 8割方駐車場はうまり、多数の登山者が準備をしていた。協力金500円×22名分を収めた。 「天生県立自然公園」のパンフレットが全員に配布された。 パンフレットの地図が大きく書かれた看板の前でSチーフリーダーが、 「行きは真中のカラ谷登山道を進み、帰りは西側のブナ探勝路を歩きます。」と、 わかりやすく説明された。 なおパンフには携帯トイレ用テントブースの設置場所、使用方法の記載あり。 8:45 すぐ横の登山口から遊歩道に入る。 道は整備され、さすが県立公園だ。 歩きながらの話は、コロナワクチン接種。 9:15 天生湿原に着く。 花の終わった水芭蕉や、白く咲くコバイケソウ等が一面に生え、 ブナの木々たちに囲まれた高層湿原であり、感動的美しさである。 9:35 カラ谷分岐(1360m)に着く。小休止。 カツラの巨木あり。 Oさんが、 「地下水流があるところで、カツラの木は大きく育つんですよ。」と 説明される。 右手に深さ1m、幅2〜3mの水が全く流れていない川がある。 登山道はこのカラ川に沿って緩やかに登っていく。 カツラの巨木群は写真撮影にも人気のスポットであるとの こと。誠にスバラシイ。 小休憩後、先に進むと、小さな湿原帯があり、 大きな白いあわのかたまりが、3つほどある。 Oさんが、「一匹のカエルのメスの元にオスが多数集まり、 オスが皆であわをふいて、メスがその中に卵を生んで作るのです。」と話をされる。楽しく聞く。 私はカエルの話から、昔々、山深いこの天生峠の孤家 (人里はなれた一軒家)に住む美しい女と深い深い関係に なり、女の吐く息で、カエルやコウモリや馬に変身させられた 男たちの話である『高野聖』を連想する。 ニリンソウやキヌガサソウが群生している所もある。 先に進むとカラ川が水の流れる川となった。 この流れは天生川となり次に宮川に入り、やがて神通川となる。 水の流れから『高野聖』の場面を思い出す。 一人の修行僧が、ヒルが降ってくる天生の森をどうにか抜けると峠に孤家があった。 もう少しで太陽が落ちるので、夜の宿を依頼した。 美しい女が出て来て、ヒルにいくつも吸われた僧を崖の下の流れにつれていった。 僧は着物を取りあげられ、清流に浸からせられた。 いつのまにか女も全裸になっており、近づいてきて、きれいな水を手ですくって 僧の体を洗ってくれた。 そうしていると、大きなコウモリやカエルが出現し、女にまとわりつく。 女は「いけませんよ」というと、動物たちは、静かに森へもどっていった。 ここから遊歩道は登山道となる。コース一番の急坂だ。 8か月ぶりの登山となる私はトレーニング不足で、 息も切れぎれになり、やっと登り切る。 10:55 籾糠分岐(1620m)に着く。 パソコンよりだしたウオーキングマップをみると、 ここから頂上までは、標高差122m、長さ800m、 所要時間40分とある。ガンバロウと思う。 登り始めると下りてくるたくさんの登山者とすれちがう。 マップで見るとまわりはダケカンバ、オオシラビソ、ブナの原生林と 書いてある。 突然、急坂が出現する。登りきった所が頂上だそうだ。 11:30 鋭くとがった円錐形の頂上についた。 本によると20人ほど座れる程度と書いてある。 私たちが全員着くと他の登山者たちは皆下りていってしまった。 自然公園の監視員のおじさんに「ここで食事を取ってよいですか?」と Yサブリーダがやさしい声で聞くと、「OK」とのことで、 いつもの楽しい食事時間となった。 東の方は雲の間に所々北アルプスが見えるが、名前まで特定できない。 猿ケ馬場山が西南に見える。白山はその後ろになる。 食事が終わるとたくさんの登山者が上がってきた。急いで写真を撮る。 12:05 下山開始。下りの苦手な私は、頂下の急な下り坂で慎重に足を運ぶ。 ここはこれから帰路となるブナ探勝路の分岐点だ。 Mさんがパソコンソフト「カシミール3D」からとった地図を、コンパスを出して見ていると、新しい会員さんたちが集まられ、地図とコンパスの使用方法を教えてもらっていた。 なお、国土地理院の1/2.5万の地図には籾糠山への登山道の記載なし。 ブナ原生林を見ながら遊歩道を進む。 みごとな美しさだ。1500mほど歩く。 13:40 朝に通ったカラ谷分岐に着く。 すぐに天生湿原で、今度は木道西回りを歩く。 『高野聖』の話、 夜になって僧は寝床に入ると、家のまわりにサル、 シカ、熊、カエル、コウモリなど山の動物が集まってくるのが気配で感じた。 家の外から「静かにしなさい。今夜はお客様がいるのだから」と女の声がした。 僧は怖くなり、一晩中お経をとなえて過ごした。 そして、ふもとの人里に着いた時、昨日、天生峠に登り始めに追い抜いて行った越中富山の薬売りが、 あの女に馬に変身させられたことを知った。 木道は約400mで遊歩道に合流した。そこから1100m歩けば終了だ。 14:30 天生峠の登山口へ下山した。「人間の姿のままで帰ってこられたことに」感謝。 14:45 バスは駐車場を出る。 途中で白川の道の駅に寄ったりしたので、富山の新富観光バスセンターには、16:50に着いた。 今回の籾糠山は、湿原を含めて「天生県立自然公園」として、岐阜県が大変力を入れて、その美しい自然と 文化をいつまでも大切に守っていこうとするのがわかった。 山頂に行かなくても、カツラ門まででも、この自然公園のすばらしさを共感できる。 貴重な自然環境を保護保全し未来につなげていくために、協力金も必要だと思う。 こうした運動が他の地域すなわち全国的に広がっていくことが重要だと思う。 【 籾糠山で出会った花たち 】 |